源泉徴収票の見かたと計算

会社からもらった源泉徴収票の見かたと、計算式を紹介します。所得税や復興特別所得税、所得控除や給与所得控除額について紹介します。年末調整の時の参考にしてください。

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源泉徴収票の見かたと計算

2014/02/28 17:17

 

年が明けると会社から渡されるのが、「源泉徴収票」。今までサラリーマンとして働いていた時は、あまり詳しく見ようと思わなかったのですが、個人事業主になって、ようやく源泉徴収票の見かたがわかってきたので、詳しく解説したいと思います。
一見むずかしそうに見える源泉徴収票ですが、小学3~4年制程度の算数の知識があれば、簡単に理解できてしまうと思います。

そもそも源泉徴収ってなに?

現世徴収票の見本

源泉徴収とは、源泉徴収税のことで、いわゆる「所得税」のことです。
もっとわかりやすく言えば、私は所得税は「儲け税」といったほうが正しいというか、わかりやすいんじゃないかと思います。
サラリーマンであれば、「手取り税」といったほうが伝わりやすいでしょうか?
ただ、平成25年度から平成49年度までこれにプラスして「復興特別所得税」が加わり、 所得税と復興特別所得税を合わせた額を「源泉徴収額」と呼ぶようです。

本来であれば、1年間の儲けが決まってから所得税が計算されるわけですが、サラリーマンなどは、あらかじめ4月5月6月の給与から1年間分の年収を算出して、先払いします。
これだと後々計算が食い違ってくるので、「年末調整」できちんと計算しなおして、多く税金を払っていた場合は還付という形で返ってきます。
当然、足りなければ足りないぶんを払わなくてはなりません。

源泉徴収票を詳しく見る前に、知っておいておいたほうがより理解が出来る、という用語を先に解説したいと思います。

所得とは

個人事業主の場合、1年間の売上がまるまる儲け、というわけではありません。
売上を上げるために広告を配ったり、運送業であればトラックなど自動車を用意したり、ガソリン代がかかったり、と、色々な売上を上げるために必要になってくる支出があります。
これを「経費」とか「必要経費」といいます。
売上から経費を引いた金額、これが儲けですよね。この「儲けの金額」を確定申告では、「所得金額」といいます。
それに対して1年間の「売上」の合計は、「収入金額」と呼ばれます。
「収入」と「所得」、似たように思えますが、収入は売上金額の合計。所得はその売上金額から必要経費を引いた金額、となります。

経費と給与所得控除

サラリーマンの場合は、仕事で使用するものを自腹で購入しても経費として申告できないので、だいたいこのぐらいの経費がかかっている、とする「給与所得控除額」があります。(後述)

所得控除

儲けは、経費だけでなく生活に必要なお金も引くことが出来ます。扶養控除とか配偶者控除、住宅ローン控除やら医療控除といったものです。
これらも経費と同じように収入から引くことが出来ます。
儲け額を低くすれば、儲け税(所得税)も安くすることが出来るので、なるべく色々な金額を差し引くほど、税金も安くなるわけです。

所得税

売上の合計(収入)から、仕事で必要な支払い(経費)を引き、生活に必要な支払い(所得控除)を引いた金額が自由に使える金額、つまり「儲け」。
この儲け額に所得税率という数字を乗じて(かけて)求めるのが、所得税になります。
これ以外に住民税というものもあり、個人事業主ではさらに「個人事業税」がプラスされます。
どれもこの「設け額」を元に算出されるので、いかに設け額を低く抑えるか、で、最終的に残る金額が決定してしまうわけです。
ちなみに厚生年金や健康保険も、この儲け額を元に算出されるため、年収が低い人はそれほど引かれる額は多くありませんが、年収が高ければ高いほど、ガッツリとられてしまいます。
消費税が平等と言われるのは、このためですね。

源泉徴収票の見かた

給与所得の源泉徴収票これが会社から支給される源泉徴収票です。
一応、年収400万円で、専業主婦の奥さんが1人。
17歳の息子が1人。
と、仮定します。
また、民間の生命保険と年金にも加入していると仮定しました。

支払金額・給与所得控除・源泉徴収額

支払金額と源泉徴収額の見かた源泉徴収票は、大きく2つに分けると、より見やすくなります。
支給金額などが書かれている上段と、配偶者の有無などが書かれている下段に分けました。

① 支払金額

いわゆる「年収」とか、「引かれる前の金額の合計」と呼ばれる額です。
個人事業主で言う、収入や売上金額に当たる部分です。

画像の源泉徴収票では、4,000,000円になっています。

②給与所得控除後の金額

給与所得控除とはなんでしょう?
サラリーマンのような給与所得の場合、「経費」という概念がありません。
ところが実際には、サラリーマンもOLも、会社で通勤するときに使うスーツや靴、そして自動車、あるいは人によっては実家(田舎)から都心に引っ越して通勤している人もいると思いますが、これらの購入費用や維持費、家賃などなど、色々なお金がかかっています。
このように実際にはサラリーマンも、個人事業主で言う「経費」に当たる支払いが発生しているはずです。
これら経費の計算を1人1人のサラリーマンなどにしていたら、会社の経理も本人も非常に大変です。
そこで、だいたいこの年収ならこのぐらいのこうした支払いがあるだろう。という計算式を決め、領収書や実際にはそれほど支払いがなくても、払ったことにしていいですよ。という金額を年収から引いていいことになっています。
この引いていい金額のことを「給与所得控除」といいます。
で、この大体の金額が、実際にはかなり多く設定していて、サラリーマンは実際にはすごく優遇されているんですよね。

計算の仕方は、

支払金額(収入金額) 給与所得控除
180万円以下 収入金額 x 40%
65万円に見たない場合は65万円
180万円超、360万円以下 収入金額 x 30% + 18万円
360万円超、660万円以下 収入金額 x 20% + 54万円
660万円超、1000万円以下 収入金額 x 10% + 120万円
1000万円超、1500万円以下 収入金額 x 5% + 170万円
1500万円超 245万円(上限)

年収400万円だと、

400万円 x 20% + 54万円 = 134万円(給与所得控除額)

と、なり、給与所得控除後の金額は、

400万円 - 134万円 = 2,660,000円

となります。

③所得控除の額の合計額

源泉徴収票の控除の明細

上段の「源泉徴収額」に行く前に、いったん下段の項目に行きます。
上段の③所得控除額の合計が、1,540,000円になっていますが、この下の段でこの内訳が記入されています。
左から、
「控除対象配偶者の有無」「配偶者特別控除の額」「
控除対象扶養親族の数」「障害者の数」「社会保険料等の金額」「生命保険料の控除額」「自信保険料の控除額」「住宅借入金特別控除の額」
ここに記載された値や金額によって、「所得控除の額の合計額」が決まります。

所得控除とは?

「所得控除」とは、「経費」や「給与所得者控除」にちょっと似ていて、所得から引いていいことになっている金額のこと。
所得税や源泉徴収税は、儲け(経費などを引いた額)が多ければ多いほど、多くなります。なので、なるべくなら少ないほうがいいわけです。
なので、収入から経費や所得控除で引いていけば、その分税金が安くなる、というわけです。

「経費」は事業や仕事にかかる支払でしたが、「所得控除」は生活していく上で発生する支払いのことです。
例えば、専業主婦や扶養家族を養うための月々の生活費(「配偶者控除」「扶養控除」)、厚生年金や健康保険などの社会保険。
それから民間の生命保険や年金などなど。
生きていく上で最低限かかるであろうお金だから、経費みたいに収入から引いていいですよ。というのが、「所得控除」になります。
「配偶者控除」や「扶養控除」は、給与所得者控除のように実際にかかったお金ではなく、配偶者ならこれくらい。◯◯歳のお子さんならこれくらい。という設定があります。

① 配偶者控除

「控除対象配偶者の有無等」に当たる部分です。
配偶者(奥さん)の場合は、配偶者の収入が0であれば、380,000円になります。
未婚であったり、配偶者が働いていたりすると、ここは「無」になります。

② 扶養控除

「控除対象扶養親族の数」に当たる部分です。

区分 控除額
16歳以上~19歳未満 38万円
19歳以上~23歳未満 63万円
70歳以上 同居していない 48万円
同居している 58万円

残念ながら現在(平成26年)では、16歳未満のお子さんは、控除の対象から外れました。が、その分「子ども手当」が支給されるので、二重の待遇を解消するためだと思います。
19歳から23歳の受験生・大学生あたりは最もお金がかかる時期なので、控除額も上がっています。

70歳以上の両親などがいる場合、やはり生活費もかかるでしょうから、控除額も多くなっています。

今回の例では、17歳の息子なので、380,000円の控除になります。

③ 社会保険

「社会保険料等の金額」に当たる部分です。
給料から天引きされている「厚生年金」と「健康保険」の合計ですね。
本来はちゃんとした計算方法があるのですがめんどくさい300,000円かかったと仮定しました。
社会保険料の合計は、全額控除の対象となります。

④ 生命保険料の控除

「生命保険料の控除額」に当たる部分です。

年末調整の時の生命保険料控除

社会保険とは別の民間の生命保険や個人年金です。
年末調整の時に会社から渡される用紙に生命保険や個人年金の支払いがあるか記入する「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」を記入して提出するように会社から言われると思うのですが、ここに記入する金額のことですね。
社会保険料と違い、全額控除にはなりません。ちょっと複雑なのですが、平成23年12月31日以前は、生命保険料控除と個人年金保険料は最大5万円ずつの、最大計10万円になります。
それ以降に契約した場合は、それぞれ最大4万円ずつの、最大計8万円になります。
つまり、年間生命保険に5万円(平成24年以降契約した場合は4万円)。個人年金に5万円(平成24年以降契約した場合は4万円)以上支払っていれば、最大10万円(平成24年以降契約した場合は、最大8万円)の控除をうけることが出来ます。

今回は、平成23年以前の契約とし、生命保険が1年間で12万円(月あたり1万円)。個人年金保険料が1年間で12万1200円(月あたり1万1000円)と仮定。
控除額は、100,000円になります。

基礎控除

これ以外にサービス(?)として、収入がある人はすべて380,000円の控除を受けることが出来ます。

所得控除の額の合計額

以上をすべてたすと・・・

380,0000円(配偶者控除)+380,0000円(扶養控除)
 +300,000円(社会保険料控除)+100,000円(生命保険料控除)
 +380,000円(基礎控除)
 = 1,540,000円(所得控除の額)

となります。

項目 金額
① 支払金額 4,000,000円
給与所得控除 1,340,000円
② 給与所得控除額後の金額 2,660,000円
配偶者控除 380,000円
扶養控除(一般の控除対象扶養親族) 380,000円
厚生年金 300,000円
健康保険
生命保険料の控除額 100,000円
基礎控除 380,000円
③ 所得控除の額の合計 1,540,000円
④ 源泉徴収額 57,100円

源泉徴収額

さて、以上の金額から一番求めたかった(?)源泉徴収額、つまり所得税を求めてみましょう。
今まで出てきた「給与所得控除」やら「所得控除」やらは、最終的にこの源泉徴収額を求めるための金額だったわけです。

課税所得 = 4,000,000円(支払金額) - 1,340,000円(給与所得控除)
 - 1,540,000円(所得控除) = 1,120,000円

課税所得とは、所得税(源泉徴収額)を求めるための基礎となる額の事になります。
「収入」が売上など全部ひっくるめた合計で、「所得」が「収入」から「経費」を引いた金額。
「課税所得」は、そこからさらに「所得控除」を引いた金額です。
ここまで計算できたら、続いて「所得税率」を求めます。
実は、所得税は年収が低い人は低く、年収が高い人は高くなる「累進課税(るいしんかぜい)」という低所得者優遇システムになっています。
年収が高い人は、4割が所得税で。1割が住民税でと、合計5割が税金で取られてしまうことになります。

所得税率
課税所得 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超 40% 2,796,000円

ここでも「控除額」が出てきましたが、これは、例えば195万円を超えると急に10%に上がるのか、というと、実際には、

195万円 x 5% = 9万7500円

196万円 x 10% - 9万7500円(控除額) = 9万8500円

と、徐々に上がるような仕組みにするための控除になります。
今回、課税所得が1,120,000円だったので、所得税率は5%になり、「所得税」は、

1,120,000円 x 5% = 56,000円(所得税)

となります。

復興特別所得税額の計算

本来なら、この 所得税=源泉徴収額 になるんですが、東北関東大震災の復興支援として、これに「復興特別所得税」が加わりました。
復興特別所得税額の計算の仕方は、上の表の「税率」に2.1%を乗じたものとなっていて、合計税率と呼ばれます。
例えば、本来であれば所得税率は5%ですが、

合計税率 = 5%(所得税率) x 102.1% = 5.105%

源泉徴収額 = 所得税 + 復興特別所得税額
 = 1,120,000円 x 5.105% = 57,170円

10の位、1の位は切り捨てるっぽい(?)ので、実際には57,100円(源泉徴収額)となるようです。

また、以下の様な計算でもいいようです。

源泉徴収額 = 所得税 x 102.1% = 57,176円 ≒ 57,100円

まとめ

複雑そうな源泉徴収票も、1つ1つ、数字を見ていくと、それほど難しくないことがわかります。
また、この源泉徴収票は、会社を退職して自分で確定申告をする時や、株で損失を出した時や、FXで利益が出た場合、副業をした場合、など自分で確定申告するときにも、必要になってきます。

源泉徴収票をもらうには

なお、源泉徴収票は、翌年の1月か2月の給料日や、会社を退職した時など、会社が発行してくれます。
新しい会社に就職した時に、以前勤めていた会社の源泉徴収票を求められるので、退職した時は忘れずにもらっておいてください。