消費税の簡易課税と本則課税の違いとは
確定申告で消費税を申告する場合、「簡易課税」か「本則課税」のどちらかで納める消費税を計算する必要があります。はじめて確定申告で消費税を納める場合、初心者にはよくわからないと思うので、初心者にもわかるようにこの2つの違いを紹介したいと思います。(まぁ、私も今年始めて申告するのですが)
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目次
本則課税とは
例えば消費税8%の場合、売上の8%が消費税になりますが、仕入れや経費で支払った消費税を引くことが出来ます。
言葉だけだとわかりにくいので、実際に税務署に提出する消費税の申告書で見てみることにします。
以下の例では、2018年の1年間で行った仕事は、引越の手伝い(特に深い意味はありません(笑))の1件だけで、この売上が税込み108,000円(消費税8%)だったとします。
また、経費などはかからなかった場合から見ていきます。
決算書の①「売上(収入)金額」は、108,000円でそれ以外の収入がなかったので、⑦「差引金額」も108,000円になります。
仕訳日記帳
仕訳日記帳でみると以下のようになります。なお、会計ソフト(私はやよいの青色申告 デスクトップ版を使用していますが)の入力は、やよいの青色申告の使い方を参考にしてください。
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 | |
借方補助科目 | 消費税額 | 貸方補助科目 | 消費税額 | 借方税区分 | 貸方税区分 | |
12/31 | 売掛金 | 108,000 | 売上高 | 108,000 | 引越の手伝い | |
課税売上8% |
課税標準額の求め方
売上高108,000円で消費税が8%の場合は、税抜きの売上高は、100,000円になるのはだいたい想像がつくと思います。が、実際には正しい計算の方法があります。
税込みの売上高(ここでは108,000円)に、100/108を掛けて、1000円未満の端数は切り捨てます。
例えば税込みの売上高が、123,456円だった場合はこのように114,000円になります。
もし、消費税が10%の場合は、100/108 の部分が 100/110 になります。この場合も1000円以下の端数は切り捨てて計算します。
こちらが「本則課税方式」で申告する場合の、税務署に提出する申告用紙(消費税申告書)の例です。
ここで(2)の「消費税額」の値が8,000円ではなく6,300円になっている点に注目してください。
消費税は国税と地方消費税の2つ
消費税は実は、「地方消費税」と「国税消費税」の2つを足した金額になります。消費税8%の場合は、国税が6.3%。地方消費税が1.7%(足すと8.0%)になります。消費税10%の場合は、国税が7.8%、地方消費税が2.2%になります。
申告書ではまず「国税」の方の消費税の額を求めます。なので、ここで(2)の「消費税額」が、(1)「課税標準額」の6.3%の6,300円になっています。
なお、ここの金額は100円未満は切り捨てになります。
控除税額
さてここからが本則課税と簡易課税の違いが明確になります。「控除税額」という項目があります。ここは、事業を行うに当たって仕入れにかかった金額や、経費などにかかった金額で支払った消費税を入力します。
今回の例では、経費や仕入れが1つも発生しなかったので、ここ(控除税額)が空白になっています。
消費税及び地方消費税の合計税額
一番下の(26)を見てみると、8,000円という金額になっています。売上金額108,000円で消費税が8%の場合は、消費税は8,000円なので(26)の「消費税及び地方消費税の合計税額」の値とぴったり一致しています。
経費が発生した場合
上の例では仕入れや経費がかからなかったので、8,000円がそのまま納める消費税になります。が、経費・仕入れ費などが発生した場合はどうなるのでしょう?
仕訳日記帳
仕訳日記帳では以下のようになります。今回の例では、引っ越しにレンタカーを借り、税込みで10,800円でした。現金で支払いました。
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 | |
借方補助科目 | 消費税額 | 貸方補助科目 | 消費税額 | 借方税区分 | 貸方税区分 | |
12/31 | 売掛金 | 108,000 | 売上高 | 108,000 | 引越の手伝い | |
課税売上8% | ||||||
12/31 | 旅費交通費 | 10,800 | 現金 | 10,800 | レンタカー代 | |
課対仕入8% |
すると経費が発生しなかったときは空白だった「控除税額」に数字が埋まっています。
ここの「控除対象仕入税額」も先程の(2)「消費税額」と同じ計算になります。
10,800円 x 100/108 = 10,000円
10,000円 x 6.3% = 630円(4)
(7)「控除税額小計」はそのまま(4)「控除対象仕入税額」の金額を入力します。
差し引き税額
(9)「差引税額」は、(2)6,300円から(7)630円を引き、100円未満切捨にします。
6,300円 - 630円 = 5,670円 ≒ 5,600円
この5,600円が国税(6.3%)の消費税になります。
地方消費税を求める
今度は地方消費税(1.7%)を求めます。先ほど求めた国税の5,600円を元に
5,600円 x 17/63 = 1,511.1111 ≒ 1,500円
ここでも100円未満は切り捨てます。
これで地方消費税1,500円が算出されました。
なお、ここででてきた「17/63」は、消費税8%の場合の値です。なぜ17/63か、は「地方消費税の税率」の「第72条の83 地方消費税の税率は、六十三分の十七とする」から来ていますが、
消費税(国税) = 消費税額 x 63/100
地方消費税 = 消費税額 x 17/100
地方消費税 = 消費税(国税) x 17/63
と、突き詰めると国税分の17/63が地方消費税分になるからです。
消費税及び地方消費税の合計税額
あとは国税と地方消費税を足します。
5,600円 + 1,500円 = 7,100円
これで「本則課税」方式で納める消費税の額を求めることが出来ました。こうやって1つ1つ計算していくと、それほど複雑な仕組みにはなっていないことがわかります。
なお、やよいの青色申告などの会計ソフトなどを使うと、こうした計算や申告書の作成もすべて自動で作成してくれるので、簡単です。
参照:やよいの青色申告で消費税を入力するには
消費税が安くなる?
今回のような複雑な計算をしないで、単に8%を使って計算すると、
8,000円 - 800円 = 7,200円
のように納める消費税は、7,200円になるはずですが、申告時の計算は1000円未満の端数を切り捨てたり、100円未満の金額は切り捨てているので、若干安くなります。
簡易課税とは
続いて同じ条件(引越の手伝い108,000円で、経費などが発生しない)で、「簡易課税」で申告する場合を見てみます。
簡易課税は売上高のみから消費税を計算する
「簡易課税」方式の最大の特徴は、売上高から消費税を求める点です。「本則課税」では、仕入や経費にかかった消費税を差し引くことが出来ました。が、「簡易課税」では、だいたいこのくらいの消費税を経費などで支払っているという「みなし税率」を使用して「控除税額」が計算されます。
そのため、一番最初の例のように仕入や経費がかからなかった場合でも、「控除税額」が発生し、納める消費税が安くなります。
「簡易課税」方式でも先程と同じ条件で、「引越の手伝い」108,000円の売上高で、経費などが発生しなかった場合、「簡易課税」で納める消費税の計算をしてみます。
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 | |
借方補助科目 | 消費税額 | 貸方補助科目 | 消費税額 | 借方税区分 | 貸方税区分 | |
12/31 | 売掛金 | 108,000 | 売上高 | 108,000 | 引越の手伝い | |
簡売五8% |
みなし仕入率
「簡易課税」では、「みなし仕入率」という値が計算に含まれるのですが、これは事業によって違ってきます。
例えば八百屋など仕入が多い卸売業(90%)は、多くなるし、経費が殆どかからない不動産業は低く(40%)になります。
なお、アフィリエイトや作家(いわゆるサービス業)などは「第五種事業(50%)」になります。
なお、この「みなし仕入率」の「事業区分」は勝手に決めていいわけではなく、「簡易課税」を選択するときに税務署に提出する消費税簡易課税制度選択届出書に記載して提出する必要があります。
今回は「第五種事業(50%)」として計算します。
(2)の「消費税額」までは先程の「本則課税」と同じです。が、その下の(4)「控除対象仕入税額」が、(2)の「消費税額」に「みなし仕入率(ここでは50%)」を掛けて求めます。
6,300円 x 0.5 = 3,150円
(11)「納付税額」で国税の消費税額が算出されますが、100円以下が切り捨てなので、3,100円になっています。
続いて地方消費税(20)を計算します。
3,100円(国税分) x 17/63 = 836.5円 ≒ 800円(20)
あとは国税分と地方消費税を足します。
3,100円(11)+800円(22)=3,900円
本則課税で申告した場合、8,000円の消費税を収めないとならないわけですが、簡易課税を選択した場合は、3,900円と半分以下になりました。
このように経費や仕入がかからないような事業の場合は、「簡易課税」を選択したほうが納める消費税の金額が低くなる可能性があります。
経費や仕入が発生した場合
注意すべき点は、簡易課税では経費や仕入が発生した場合でも、「控除税額」の値は「課税標準額」のみで決定されるので、仕入が多い場合は逆に納める消費税が多くなる可能性がある点です。
書類の提出が必要
本則課税と簡易課税の最も大きな違いは、税務署に「消費税簡易課税制度選択届書」を提出しないと、選択できないと言うことです。
提出は確定申告で申告する年の年末までに行わなければならないので、確定申告する時期(2~3月)になって簡易課税制度で申告する!と言うことは出来ません。
また、一度「簡易課税制度」を選択すると、2年間は「本則課税」に戻せません。
仕入れ費や経費が大量にかかったので、本則課税で申告したい。という可能性がある場合は、簡易課税制度を選択すると損をする可能性があります。
みなし仕入率
仕入れ費が多くなる「卸売業」や「小売業」は必然的にみなし仕入率が多くなり、納める消費税も少なくなります。
逆に経費があまりかからないアフィリエイトや不動産業などは逆にみなし仕入率が低くなります。
事業区分 | みなし仕入率 | 該当する事業 |
---|---|---|
第一種事業 | 90% | 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)をいいます。 |
第二種事業 | 80% | 小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第一種事業以外のもの)をいいます。 |
第三種事業 | 70% | 農業(※)、林業(※)、漁業(※)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業をいい、第一種事業、第二種事業に該当するもの及び加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。 ※平成31年(2019年)10月1日を含む課税期間(同日前の取引は除きます。)からは、農業、林業、漁業のうち、消費税の軽減税率が適用される飲食料品の譲渡に係る事業区分が第三種事業から第二種事業へ変更されます。 |
第四種事業 | 60% | 第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業及び第六種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。 なお、第三種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第四種事業となります。 |
第五種事業 | 50% | 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第一種事業から第三種事業までの事業に該当する事業を除きます。 |
第六種事業 | 40% | 不動産業 |
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投稿日:2019/01/30 13:52:14
更新日:2019/02/03 19:17:29
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